第125回日本産科麻酔学会学術集会

ご挨拶

第125回日本産科麻酔学会学術集会
会長 田中 基
名古屋市立大学大学院医学研究科
麻酔科学・集中治療医学分野 周産期麻酔部門 教授
名古屋市立大学病院 無痛分娩センター長

 第125回日本産科麻酔学会学術集会を開催するにあたり、謹んでご挨拶申し上げます。昨年はCOVID-19感染症のアウトブレイクにより学術集会は中止となり、2年ぶりの開催となりました。本年は万全の感染対策のもと、皆様をお迎えする準備をすすめています。今後の感染状況によっては皆様に御迷惑をお掛けする可能性はありますが、どうぞ宜しくお願い致します。

 本年の学術集会のテーマは「チームで創る産科麻酔」としました。私の持論は「産科麻酔はチーム医療である」です。安全で効果的な産科麻酔は、麻酔科医のみ、産科医のみで成立するものではありません。産婦を中心に、多職種で知恵を出し合うことにより実現できると考えています。本学術集会が職種の垣根を超えた「チーム医療」を育む機会になればと願います。

 特別講演は4題を準備しました。カナダ・トロント大学産科麻酔科のCarvalho教授には“Vasopressorin cesarean delivery:past, present, and future”と題し、帝王切開術における昇圧剤の歴史と今後の展開についてお話しして頂きます。北里大学産科学の海野信也教授には「無痛分娩の安全性向上のために―無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA)の活動報告(2021年度)―」をお願いしています。海野教授はJALA設立時よりJALA総会議長として我が国の硬膜外分娩の安全性向上に尽力して下さっておられ、わが国における今後の硬膜外分娩の方向性を模索していただきます。国立保健医療科学院の種田憲一郎先生の御講演タイトルは「チーム医療とは何ですか?何ができるとよいですか?―エビデンスに基づいたチーム医療のすゝめ:チームSTEPPS」です。職種の垣根を越えた楽しい講演により、チーム・ビルディングのコツをつかんで頂ければと思います。産科危機的出血における子宮収縮薬の使用方法に関して造詣の深いカナダ・トロント大学産科麻酔科のBalki教授には“Uterotonics in cesarean delivery”と題して、帝王切開における安全で効果的な子宮収縮薬の使用方法について御講演していただきます。

 シンポジウムは会長企画シンポジウム2題「チームで創る硬膜外分娩の実践」および「COVID-19と産科麻酔」に加えて、今回初めて「委員会企画シンポジウム」4題を用意しました。産科救急WG企画「産科危機的出血に対する治療戦略の意思決定とその実践」、合併症妊婦WG企画「心疾患合併妊娠と麻酔」、ペインWG企画「周産期の慢性疼痛」、集中治療WG企画「COVID-19と産科集中治療」と、どれもエキスパートの委員会メンバーによる渾身の企画です。

 更に、教育講演も6題を準備しています。「基礎から学ぶCTG―胎児生理からの説き起こしと多職種連携ツールへの展開」、「一次施設産科医が行う無痛分娩~その安全管理と産科的側面からの考察~」、「羊水塞栓症を知る!明日からの診療に活かす!」、「気道管理を最適化する私的戦略~気管挿管に焦点を当てて~」、「深堀り解説!“術中心停止に対するプラクティカルガイドライン―母体の心停止―”」、「NCPRのキモ・2021アップデートも交えて」と、盛り沢山な内容です。

 一般演題は、50題もの応募を頂きました。うち7題が学術委員会の御協力により優秀演題(大川賞候補演題)に選出されています。大川賞候補演題のセッションは、学術集会の目玉企画の一つです。なお、一般演題のポスターセッションは初めて電子ポスターを採用し、密を避けるために発表時間が重ならない工夫をしました。各セッションの座長は、麻酔科医と産科医が一緒に担当して頂きます。このようなことが出来るのは、麻酔科医と産科医が協力して運営している日本産科麻酔学会の特色といえるでしょう。

 また講演の他に、J-CIMELS(日本母体救命システム普及協議会)主催講習会(J-MELSベーシックコース、J-MELS硬膜外鎮痛急変時対応コース)、鉗子分娩ハンズオン講習会、DIRECT研究会主催「周産期救急におけるREBOAとIVR:DIRECTワークショップによるオンライン標準化教育と多職種連携推進」等、多彩な企画も用意しております。本年は、COVID-19感染症の影響を考え、恒例の「会員懇親会」はありません。学術集会のあとは、少人数で「名古屋めし」をご堪能して頂ければと思います。また最優秀一般演題「大川賞」の表彰式は、学術集会の閉会式に行う予定です。

 学術集会の開催形式は、「現地開催+後日オンデマンド配信」を予定しております。2年ぶりの現地開催の学術集会にて旧交を温めていただくも良し、新たな産科麻酔の仲間を作って頂くのも良し、そして後日にオンデマンド配信で復習して頂くのも良いかと思います。本学術集会は、麻酔科医、産科医はもちろん、助産・看護師をはじめとする多職種の皆様にとっても有意義になるものと確信しております。どうぞ楽しい2日間にして頂ければと思います。

 最後に、この厳しい経済状況のなか、本学術集会に御支援頂いた企業・団体・個人の皆様に感謝申し上げます。

2021年11月吉日

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